【eスポーツの教科書】その2(eスポーツ大会の賞金と3つの法律)

こんにちわ。

いきいき茨城ゆめ国体で全国都道府県対抗eスポーツ選手権が行われます。

タイトルはグランツーリスモ、ウイニングイレブン2020、ぷよぷよeスポーツの3タイトルです。参考までにリンクを張っておきます。

http://culture-ibaraki.jp/esports2019/

 

さて、前回からの続きです。

eスポーツの教科書 その1

 

②「eスポーツ大会の賞金と法律」

eスポーツ大会の賞金には3つの法律「景品表示法」「刑法(賭博法)」「風営法」が大きく関わっています。この法律の問題でeスポーツ産業の普及のスピードや規模が大きく変わってきます。

 

■景品表示法 (賞金について)

興味深い内容でした。ある条件のもとでは景品表示法に定める「景品類」に抵触すると、大会の賞金上限が10万円になるというものです。この「景品表示法」とは厳密には「不当景品類及び不当表示防止法」といい、一般消費者の利益の保護を目的に制定されてたものです。具体的には実際より良く見せかけた表示や課題な景品付き販売が行われると、消費者がそれにつられて実際には質のよくない商品やサービスを買ってしまい不利益を被るためこれを保護するための法律になります。

で景品表示法の景品類の定義

■景品類の定義(景品表示法)

「不当景品類及び不当表示防止法」 第1章 第2条より抜粋

3 この法律で「景品類」とは、顧客を誘引するための手段として、その方法が直接的で
あるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が自己の
供給する商品又は役務の取引(不動産に関する取引を含む。以下同じ。)に付随して相手
方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であつて、内閣総理大臣が指定するもの
をいう。
—-

つまり自社発売のソフトの場合は抵触することになります。当法律に抵触する場合は、以下の制限がかかります。

 

■懸賞による景品類の提供に関する事項の制限

懸賞による景品類の提供に関する事項の制限  より抜粋

2 懸賞により提供する景品類の最高額は、懸賞に係る取引の価額の二十倍の金額(当該金額が十万円を超える場合にあっては、十万円)を超えてはならない。

5000円以上の商品で10万円が上限になるということですね。

消費者庁HPの景品に関するQ&A のQ1,Q3に分かり易く記載されています。

消費者庁HPの景品に関するQ&Aリンク

 

■景品表示法に該当するか曖昧な点(①ソフトを発売した会社以外が賞金を出す大会を開いた場合、②基本プレイ無料のスマホゲームの場合)

ここで疑問が残るのは①ソフトを発売した会社以外が賞金を出す大会を開いた場合や②基本プレイ無料のスマホゲームは景品類に該当するのか、までは定義に入らないように思われます。

実際モンストやシャドウバースの大会では、発売元・運営会社のミクシィやCygamesが大会を主催しており、優勝賞金がモンストは3000万円、シャドウバースは100万ドル(1億円超)で、とくに消費者庁からの指導もなかったとのことで、筆者の岡安氏が消費者庁に取材した得た回答が以下になります。(著書より抜粋)

「興行性のあるイベントに出場し、大会で上位に入賞した者のプレイは「仕事」とみることができ、賞金がその報酬にあたる」

つまり賞金がある大会においても観客を取り入れた「興行性」があり、卓越したプレイは仕事とみなせ賞金は報酬となり景品表示法に抵触しないとなります。「卓越したプレイ」の定義は曖昧なので、このあたりを明確にするためJeSUがライセンスを発行しプロ認定しだしたのでしょう。

※先日の東京ゲームショウでSF5のカプコンカッププロツアー大会で賞金問題があったので、それは別で触れたいと思います。

 

■刑法(賭博罪) ・・・参加費の問題

高額賞金を出してくれる協賛スポンサーが問題ありませんが、数十人単位の小さなコミュニティでの大会などでは、スポンサーの協賛は難しく、通常有志の集まりになります。その場合、参加者から参加費を集め、参加費の一部を賞金にあてようとすると、刑法の賭博罪に抵触します。

賭博の定義は「偶然の勝敗によって,財物等の得喪を2人以上の者が争うこと」で、以下罰則に処されます。

賭博の定義(刑法第185条)

賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。

つまり参加費が賭け金と見做されるわけですね。(※これが合法の場合、例えば反社組織が自社組織内で何かしらの大会を開き高額賞金を出したりすれば、合法的にマネーロンダリングにも使えてしまう)そのため小規模大会でもできるような改善が欲しいと、本にも記載されており激しく同意します。参加者がお金をださずに、観客がお金を出す大会で、且つ卓越プレイがあれば、集めたお金から賞金を出することはOKということかと思います。

 

■風俗営業法 ・・・ ゲームセンター等での大会の賞金問題

—風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(通称風俗法)より抜粋

第二十三条 第二条第一項第四号の営業(ぱちんこ屋その他政令で定めるものに限る。)を営む者は、前条第一項の規定によるほか、その営業に関し、次に掲げる行為をしてはならない。
一 現金又は有価証券を賞品として提供すること。
二 客に提供した賞品を買い取ること。
三 遊技の用に供する玉、メダルその他これらに類する物(次号において「遊技球等」という。)を客に営業所外に持ち出させること。
四 遊技球等を客のために保管したことを表示する書面を客に発行すること。
2 第二条第一項第四号のまあじやん屋又は同項第五号の営業を営む者は、前条第一項の規定によるほか、その営業に関し、遊技の結果に応じて賞品を提供してはならない。
3 第一項第三号及び第四号の規定は、第二条第一項第五号の営業(※1)を営む者について準用する。

上記※1の第二条第一項第五号は以下

五 スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る。)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し、又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く。)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業(前号に該当する営業を除く。)

 

ゲームセンターでの大会での賞金は風俗営業法に抵触してしまうようです。

ではカフェみたいなところで、スマホゲームの対戦会を開き参加費を募らず、カフェ側が広告費として賞金を出すのはアリなのか、とかは気になるところですね。このあたりも整理が進むとeスポーツ普及が促進するものと思います。

 

今回は記事を書きながら、景品表示法、刑法(賭博法)、風俗営業法を調べたりして筆者の理解が進みました。日本でのeスポーツ普及においては、この3つの法律に関する改善・対応は必須で、最適解を見つけることが重要な課題ですね。JeSUの取り組みに期待したいです。

 

長くなったので今回はこの辺りで。

以上

【eスポーツの教科書】その3(「観客ありきの興行」「eスポーツの施設について」「ライブ配信によるマネタイズ」)

【eSportsの教科書】その4(「マネタイズのエコシステム構築が必要」「eスポーツ選手のセカンドキャリア」)

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