eスポーツチームは、どうやって収入を得ているのでしょうか。
プロ野球の球団なら、入場料収入、放映権料、グッズ、スポンサー、選手の移籍金という柱がだいたい分かります。Jリーグのクラブも同様です。ところがeスポーツチームについては、この問いにすっきり答えるのが難しい。チームによって収入の組成がまったく違い、しかも公開されている情報が限られているからです。
分かっているのは、国内チームの収入がスポンサー料に大きく依存していることです。賞金や放映権、チケット、グッズの比率は低いままで、これは海外の大手チームとも異なる構造です。
この記事では、eスポーツチームの収益源をひとつずつ検討し、それぞれがどんな性質とリスクを持つのかを整理します。
目次
収益源の一覧
まず、eスポーツチームが持ちうる収益源を並べてみます。
| 収益源 | 内容 | 国内チームでの比重 |
|---|---|---|
| スポンサー料 | ユニフォームや配信画面への露出、商品のPR | 最大 |
| 大会賞金 | 大会での成績に応じて得る賞金 | 小 |
| 配信・動画収入 | 所属選手の配信の広告収入・投げ銭の分配 | 中 |
| グッズ販売 | ユニフォーム、アパレル、コラボ商品 | 中 |
| ファンクラブ・サブスク | 月額の会員収入 | 小〜中 |
| リーグからの分配金 | フランチャイズリーグの収益分配 | タイトルによる |
| 選手の移籍金 | 選手の契約を他チームに譲渡 | ごく小 |
| 育成・スクール事業 | 一般向けのコーチング、学校との提携 | 小 |
| 施設運営 | 自社施設の利用料・イベント収入 | 一部のチームのみ |
この表を見て分かるのは、継続的で自動的に入ってくる収入がほとんどないということです。スポンサー料は契約ごとの交渉で決まり、賞金は成績次第、配信収入は視聴数次第。予測可能な固定収入に近いのは、フランチャイズリーグの分配金くらいですが、それも参加できるタイトルは限られます。
スポンサー料 —— 何を買っているのか
国内チームの主要な収入源であるスポンサー料について、もう少し詳しく見ます。
スポンサーが支払うのは、基本的に露出に対してです。ユニフォームのロゴ、配信画面のバナー、SNS への投稿、選手が使用する製品としての採用。企業のマーケティング予算から支出されます。
ここで重要なのは、eスポーツのスポンサーシップが若年層へのリーチを目的にしていることです。テレビ広告が届きにくい10代・20代に接触できるチャネルとして評価されています。ゲーミングデバイス、PC、通信、飲料、金融といった業種が多いのはこのためです。
一方で、この構造にはリスクがあります。マーケティング予算は景気に敏感で、企業の方針変更で削られやすい。競技の成績が悪くても支払われる代わりに、企業側の事情ひとつで打ち切られることもあります。チームの努力と収入の関係が薄いということです。
また、スポンサー料の水準は「どれだけの人に届くか」で決まります。競技の成績よりも、所属選手の配信の視聴者数のほうが直接的な指標になりやすい。ここから、競技チームが配信者を抱える動機が生まれます。スポンサーの視点については「スポンサーはeスポーツに何を求めているのか」で詳しく扱います。
賞金 —— なぜ柱にならないのか
海外の大手チームでは、賞金が収入の一定割合を占めます。『Dota 2』の The International のように、優勝賞金が数億円規模の大会があるためです。
日本のチームでこれが柱にならない理由は2つあります。
ひとつは、国内大会の賞金が長く低かったことです。景品表示法との関係が整理されず、主催者が高額賞金を出しにくい状況が10年近く続きました。この経緯は「eスポーツの賞金はなぜ複雑なのか」で扱っています。
もうひとつは、国際大会で勝つ機会が限られることです。賞金の大きい大会は世界大会であり、そこに出るには地域予選を勝ち抜く必要があります。出場しても上位に入らなければ賞金は小さい。
近年は状況が変わりつつあります。REJECT は2024年に PUBG MOBILE GLOBAL OPEN を制し、同年の PUBG MOBILE WORLD CUP でも準優勝しました。FENNEL は2024年8月に Pokémon World Championships を優勝しています。世界大会での上位入賞が現実的になれば、賞金の比重も変わります。
ただし賞金は本質的に不安定な収入です。毎年勝てる保証はなく、事業計画の土台にはできません。どのチームも、賞金を「取れたら良い」ものとして扱っています。
配信とストリーマー部門
国内チームの多くが、競技部門とは別にストリーマー部門・クリエイター部門を持っています。
ZETA DIVISION のクリエイター部門には、競技を退いた元選手が多数在籍してきました。Crazy Raccoon は自主開催の大会「Crazy Raccoon Cup」を大型の配信イベントとして定着させています。NORTHEPTION もストリーマー部門を活動の柱のひとつにしています。
配信は、チームにとって3つの意味を持ちます。直接の収入(広告収入・投げ銭の分配)、スポンサーへの提供価値(露出の場)、そしてファンとの接点(グッズやイベントの購買につながる)です。
とくに2つ目が大きい。競技の試合は年間で数十試合ですが、配信は毎日行われます。スポンサーのロゴを見せる時間の総量では、配信のほうが圧倒的に多くなります。
この構造が、日本のeスポーツチームを「競技団体」ではなく「タレント事務所に近い組織」に近づけています。是非はともかく、賞金という収入源が細い環境で選ばれた合理的な形です。詳しくは「ストリーマー経済はeスポーツをどう変えたか」で扱います。
グッズとファンビジネス
グッズ販売は、チームが自分でコントロールできる数少ない収益源です。
ユニフォームのレプリカ、アパレル、キーホルダー、コラボ商品。原価と在庫のリスクはありますが、売上はチームに直接入ります。スポンサーの都合にも大会結果にも左右されにくい。
NORTHEPTION が漫画作品とのコラボグッズを展開しているように、他のIPと組んで話題をつくる例も増えています。ファン層と親和性の高いブランドとの協業は、単価も上げやすい。
課題は規模です。ファンの絶対数が限られるため、グッズだけで運営費を賄うのは困難です。国内のeスポーツチームで、グッズ収入が最大の柱になっている例はほとんどありません。
ファンクラブや月額サブスクリプションを導入するチームもあります。安定した継続収入という点では魅力的ですが、会員に提供する価値を毎月用意し続ける必要があり、運営コストがかかります。
施設を持つという選択
一部のチームは、自社の施設を持っています。
FAV gaming は埼玉県所沢市の複合施設「ところざわサクラタウン」内に、eスポーツ専用施設「FAV ZONE」を構えています。NORTHEPTION は秋葉原に「NORTHEPTION GAMING BASE」を持ちます。
施設を持つ利点は明確です。練習・配信・イベント・見学の受け入れをひとつの場所でまかなえ、スポンサーに見せる「拠点」ができます。ファンイベントを自社で開ければ、外部会場の費用もかかりません。
一方で、固定費が発生します。賃料、光熱費、設備の更新、管理する人員。収入が変動する事業で固定費を増やすのは、経営上のリスクです。実際、施設を持つチームは限られています。
施設事業そのものを収益源にする道もありますが、その場合は風営法の適用を含めた検討が必要になります。この点は「eスポーツ施設は日本に根づくのか」で扱っています。
運営会社の性格による違い
国内チームを見ると、運営会社の性格によって事業の組み立て方が違うことが分かります。
独立系は、eスポーツ事業を主目的に設立された会社です。REJECT(株式会社REJECT)、FENNEL(株式会社Fennel)、ZETA DIVISION(GANYMEDE株式会社)などがこれにあたります。事業の成否がそのまま会社の存続に直結するため、収益化への圧力が強い。
グループ会社系は、親会社の事業の一部としてチームを運営します。FAV gaming は株式会社KADOKAWA Game Linkage が、CAG はブロードメディアeスポーツ株式会社(上場企業ブロードメディアの子会社)が運営しています。親会社の他事業との相乗効果を狙える一方、グループの方針転換の影響も受けます。
地域企業系もあります。QT DIG∞ は2026年4月に運営法人が九州の通信事業者 QTnet に吸収合併され、通信インフラ企業が直接チームを抱える形になりました。地域での認知向上や採用広報といった、収益以外の目的も含まれます。
どの形が正解ということはありません。ただし、収益化の必要度と時間軸は明確に違います。
支出の構造
収入だけでなく、支出も見ておく必要があります。
最大の費目は人件費です。選手の給与、コーチ、アナリスト、マネージャー、配信スタッフ。1タイトルの部門を持つだけでも、選手5人にスタッフ数名が必要になります。複数タイトルに部門を持てば、それだけ人数が増えます。
次に遠征費です。国際大会に出るには渡航費と滞在費がかかり、大会期間が長ければ数週間に及びます。成績次第で回収できるとは限りません。
練習環境の費用もあります。ゲーミングPC、周辺機器、回線、練習場所。選手が個別に自宅で練習する形なら安く済みますが、チームとして集まる環境を持てば施設費が発生します。
チームの統廃合が起きるのは、この収支が合わなくなるためです。2026年7月には CAG の Rainbow Six Siege 部門が VARREL と統合され、「CAG by VARREL」として活動する体制になりました。部門の統合や撤退は、eスポーツでは日常的に起きています。
選手との契約はどうなっているか
チームの経営を考えるうえで、選手との契約の形は重要な要素です。
日本のeスポーツでは、選手が個人事業主として業務委託契約を結ぶ形が多く採られています。雇用契約ではないため、労働基準法上の保護は及びません。労働時間の上限も、有給休暇も、社会保険も、契約に書かれていなければ適用されないことになります。
この形が選ばれるのは、チーム側の事情が大きい。収入が変動する事業で固定的な人件費を抱えるのはリスクであり、契約期間を区切れる業務委託のほうが柔軟だからです。選手の側にも、複数のスポンサーと個別に契約できるという利点があります。
一方で、問題も指摘されています。練習時間が実質的に指定され、活動場所も決められている実態があるなら、業務委託とは言いにくい。未成年の選手が契約当事者になる場合の保護も課題です。海外では、選手会が結成されて労働条件の交渉を行う例がありますが、日本ではまだ一般的ではありません。
契約に含まれる項目も重要です。契約期間、報酬、賞金の分配、移籍の条件、肖像権の扱い、SNS の運用ルール、競業避止。定型的なひな形が業界に存在しないため、チームごとに内容が大きく異なります。
数字の見えなさという問題
eスポーツチームの経営を論じるうえで、最大の障害は情報がないことです。
上場企業の子会社が運営するチームであれば、親会社の開示資料からある程度の規模が推測できます。CAG を運営するブロードメディアeスポーツ株式会社は、東証上場のブロードメディア株式会社の子会社です。FAV gaming は株式会社KADOKAWA Game Linkage の運営です。
しかし、独立系のチームの財務内容はほとんど公開されていません。売上、利益、選手の給与水準。いずれも業界内で断片的に語られる程度で、体系的なデータはありません。
これは業界にとって不利益でもあります。新しく参入しようとする企業は投資判断ができず、選手は自分の待遇が適正か判断できず、行政は支援策を設計できません。市場規模の統計は整備されてきましたが、その内訳がどこにどう分配されているかは見えないままです。
海外では、チームの資金調達額や企業価値の推定が報じられることがあります。ベンチャーキャピタルからの出資を受けるチームが多く、その過程で情報が出てくるためです。日本では出資による資金調達の例が少なく、この経路での情報も限られます。
市場統計の読み方については「eスポーツ市場規模の読み方」で扱っています。
撤退と統合の判断
チームの経営で避けて通れないのが、部門を畳む判断です。
判断の基準は主に3つです。競技の成績が上がる見込みがあるか、そのタイトルの競技シーンが継続しそうか、部門の収支が合っているか。
3つとも悪ければ判断は簡単ですが、多くの場合は混在します。成績は良いが収支が合わない、収支は合うが競技シーンが縮小している。この状況での判断が難しい。
撤退のコストもあります。選手との契約は期間があり、途中で解除すれば違約の問題が生じます。スポンサーとの約束もあります。ファンの反発もあります。
統合という選択肢も出てきました。2026年7月には CAG の Rainbow Six Siege 部門が VARREL と統合され、「CAG by VARREL」として活動する体制になりました。部門ごと他チームへ移すことで、選手の活動の場を残しながら運営コストを分担する形です。
こうした再編は、eスポーツでは日常的に起きています。産業として若く、事業モデルが確立していない以上、試行錯誤の一部と見るべきでしょう。ただし、影響を受けるのは選手とスタッフです。判断の透明性と、当事者への説明は経営の責任です。
この構造は変わるのか
現在の収益構造の問題は、スポンサー料への依存に集約されます。他社のマーケティング予算に事業の大半を預けている状態は、健全とは言いにくい。
改善の方向はいくつかあります。
観戦収入を増やす。チケット、有料配信、ファンクラブ。観客が直接支払う収入は、スポンサーより安定します。ただし、無料で見られることが前提になっているeスポーツで有料化を進めるのは容易ではありません。
IPを持つ。チーム自身がコンテンツやブランドを持ち、他社にライセンスする形です。グッズやコラボはその一歩ですが、まだ規模が小さい。
リーグの収益分配を厚くする。フランチャイズリーグでは、リーグ全体の放映権収入を参加チームに分配する仕組みがあります。これが厚くなれば、チームの経営は安定します。ただしリーグ側の収入次第です。
国内市場は2024年で約161億円、2026年には200億円を超える見通しとされています。市場が拡大しても、その配分がチームに届かなければ経営は楽になりません。規模の話と構造の話は別だ、というのがこの10年で分かったことです。
部門をどう選ぶか
チームの経営判断でもっとも重要なのが、どのタイトルに部門を持つかです。
競技人口が判断材料の第一です。競技人口が多ければ、選手の供給が安定し、視聴者も多い。ただし競争も激しく、勝つのは難しくなります。
大会の規模と賞金も見ます。パブリッシャーが投資しているタイトルは、大会の数も賞金も安定しています。逆に投資が細れば、競技シーンごと縮小します。
必要な人数はコストに直結します。5人制のチーム競技は、選手だけで5人、控えとスタッフを含めれば8人以上。格闘ゲームなら1〜3人で成立します。同じ予算なら、格闘ゲーム部門のほうが多く持てます。
タイトルの寿命も重要です。格闘ゲームは作品の寿命が長く、投資が無駄になりにくい。モバイルタイトルは入れ替わりが早く、数年で撤退する可能性を織り込む必要があります。
既存部門との相乗効果もあります。同じジャンルの部門を持てば、練習環境やコーチを共有できます。まったく違うジャンルを増やすより効率的です。
REJECT が20を超える部門を持つのは分散の戦略であり、FAV gaming が参入タイトルを入れ替えてきたのは選択と集中の戦略です。どちらが正しいということはなく、資本の性格と時間軸の違いが表れています。
投資と資金調達
チームの成長には資金が要ります。日本ではどう調達されているのでしょうか。
自己資金と借入がもっとも一般的です。運営会社の事業収益や、経営者の出資で回します。規模の拡大は緩やかになりますが、経営の自由度は保たれます。
事業会社からの出資もあります。親会社を持つチームがこれにあたります。FAV gaming は株式会社KADOKAWA Game Linkage、CAG はブロードメディアeスポーツ株式会社(東証上場企業の子会社)の運営です。資金の安定性は高い一方、グループの方針変更の影響を受けます。
ベンチャーキャピタルからの調達は、海外では一般的ですが日本では例が限られます。eスポーツチームの事業モデルが投資家に評価されにくいこと、出口(上場や売却)の事例が乏しいことが背景にあります。
地域企業との連携も出てきました。QT DIG∞ は2026年4月に運営法人が九州の通信事業者 QTnet に吸収合併されています。事業会社がチームを直接抱える形です。
資金調達の選択肢が限られていることは、業界全体の成長速度を規定しています。情報開示が乏しく投資判断ができないという問題とも、循環的につながっています。
参考・出典
- eスポーツの市場と推移|一般社団法人日本eスポーツ協会(日本eスポーツ協会・『日本eスポーツ白書2025』より)
- JESU、『日本eスポーツ白書2025』を発売…国内eスポーツ市場は2026年には200億円超と予測(gamebiz・2026年)
- Wikipedia「REJECT」
- Wikipedia「ZETA DIVISION」
- Wikipedia「FAV gaming」
- Wikipedia「CYCLOPS athlete gaming」
- Wikipedia「Sengoku Gaming」
本記事は執筆時点(2026年8月)の公開情報にもとづく一般的な整理です。個別のチームの財務内容を示すものではありません。




